自動車には法令により定められた保安基準に適合していなければ公道を走ることができません。もちろん、これは特殊車両に限ったことではありませんが、一般的な乗用車であれば保安基準の話が出ることはまずありません。
特殊車両のように大きい、長い、重い車両の制限を定めたものが保安基準だからです。
特殊車両通行許可とは違い、積荷を考慮せず、車両単体で基準に適合するかどうか?が重要なポイントになります。
極論を言ってしまえば、特殊車両を含めた全ての車両が保安基準に適合していれば問題ないのですが、それでは物流が成り立たなくなってしまうのです。
大きいもの、重い物を運ぶにはそれなりの車両がどうしても必要だからです。
この保安基準について定めているのが、道路運送車両法に基づく【道路運送車両の保安基準】です。このページでは、以下の内容について解説していきます。
・道路運送車両の保安基準の概要(特車に必要な部分)
・保安基準緩和申請の手続きと必要書類
・保安基準緩和に関するよくある質問
基準緩和云々の前にそもそも、保安基準の内容を知っておかなければいけません。基準は、道路運送車両法第三章と道路運送車両の保安基準に定められています。
全てを網羅すると趣旨が変わってしまうのと、本ページにて解説する内容ではないものも含まれるので、必要なものを一部抜粋します。
一 長さ、幅及び高さ
二 最低地上高
三 車両総重量(車両重量、最大積載量及び55Kgに乗車定員を乗じて得た重量の総和)
四 車両にかかる荷重
五 車輪にかかる荷重の車両重量(運行に必要な装備をした状態における自動車の重量)に対する割合
六 車輪にかかる荷重の車両総重量に対する割合
七 最大安定傾斜角度
八 最小回転半径
九 接地部及び接地圧
道路運送車両法第40条及び道路運送車両の保安基準にこれらについて定められています。ここには書きませんでしたが、長さは何m、幅は何mとしっかりと定められています。
詳細については、道路運送車両法、道路運送車両の保安基準をご参照ください。
原則として、上述の保安基準に適合した車両が公道を走ることができ、基準に適合していない車両は走ることができないのが原則となりますが、事情があってその基準を超えた車両が必要な場合にするのが、【保安基準緩和認定】の申請です。
保安基準の緩和とは、上記の保安基準の一部の規定を適用しない(基準を緩和する)ことを言います。緩和する項目は1項目とは限らず複数の項目の緩和を同時に申請することも可能です。
基準の緩和は道路運送車両の保安基準第55条に
「地方運輸局長が、その構造により若しくはその使用の態様が特殊であることにより保安上及び公害防止上支障がないと認定した自動車については、本章(弊所注記載「道路運送車両の保安基準第二章」)の規定及びこれに基づく告示であって当該自動車に適用しなくても保安上及び公害防止上支障がないものとして国土交通大臣が告示で定めるもののうち、地方運輸局長が当該自動車ごとに指定したものは、適用しない。」
と定めています。
大雑把にまとめると、構造や使用方法が特殊で保安・公害防止に問題がない場合は個別に緩和するということになります。
そして、緩和を受けようとする場合は、管轄の運輸局に以下の書類を提出して申請します。
①基準緩和認定申請書(正本・副本各1通)
②誓約書
③主要諸元比較表
④車両外観図
⑤計算書及び緩和部分詳細図
⑥連結自動車の連結検討書
⑦輸送依頼書又は輸送契約書
⑧輸送実績
⑨運行管理情報等
⑩その他地方運輸局長が必要と認めた書面
上記の記載は一例になりますので、緩和の内容に応じて不要なもの、追加で必要なものがあります。
申請から認定までの標準処理期間は30日となっています。
提出書類の補正等を考えると余裕をもって申請をしたいところです。
結論から言ってしまうと、特殊車両通行許可は必要です。
保安基準の緩和を受けないと公道を走行できませんし、そもそもナンバープレートの交付も受けられない可能性が高いです。
保安基準の緩和にあたって、緩和の認定を受ける項目によっては条件又は制限を設けられることがあります。その条件の中で期限が定められる場合もあります。
その期限が経過しても引き続き使用したいときは期限の2ケ月前までに保安基準緩和の認定を延長してもらうよう申請を行う必要があります
基準緩和の認定を申請できる自動車は、バン型等セミトレーラ、けん引自動車、大型貨物自動車、連節バス、クレーン車、緊急車両、誘導車両等多くの車両が定められています。
保安基準緩和の認定を申請できる自動車は?にて解説いたします。