特殊車両通行許可申請と荷主の責任、荷主勧告と2024年問題特殊車両通行許可に限らずですが、貨物運送と荷主の関係は必ず問題として上がってきます。運送会社が違反行為をする原因に荷主からのプレッシャーというのは往々にしてあり得るからです。どうしても業務を受けている運送会社が荷主の依頼で、または直接的な依頼がなくても忖度して違反をしてしまうケースがあります。そこで、国土交通省としては、荷主の主体的な関与があった場合に荷主に対して、是正勧告等をすることができるようになりました。(正確には勧告が容易になりました。)この荷主勧告制度は、あくまで勧告となります。勧告書の発出と荷主名と事案の概要の公表に留まります。荷主に対する罰則などがあるわけではありません。ただ、昨今のコンプライアンス意識の高まりや世論を考慮すると大きな企業であれば避けたいと考えるのが通常ではないでしょうか?荷主勧告に関わる行為類型ただ、荷主の主体的な関与があった場合といっても簡単に分かるものではありませんので、行為類型を明示しています。その類型は以下の行為です。・非合理的な到着時間の設定荷主の原因で積荷の準備が出来ておらず出発時間が遅延しても到着時間の変更がなされない。法令を遵守した走行では到底間に合わないような到着時間の指定等。・やむを得ない遅延に対するペナルティ設定天候不順、そもそも厳しい着時間の指定等で延着した場合に商品の買取や、配送料金の減額などを強いる。厳しい着時間の指定や荷卸しに時間がかかった結果、運行が苛酷になり過度な負担を運転手に強いる結果となった場合等・積み込み直前の貨物量の増加依頼当初予定していた倍量等、荷主から急な変更を指示されたので、断ろうとしたら取引の解消を示唆されたり、恫喝され止む無く運送せざるを得なかった等。・恒常的に発生する待ち時間の改善措置がない毎日のように待ち時間が発生し、運転手の拘束時間が改善基準告示の限度時間を超過するため、荷主に改善を依頼したが取引解消を示唆され従わざるを得なくなった等・違反行為の指示、強要荷主から違反行為(過積載や法定速度の超過等)の指示があった。断ろうとすると取引解消を示唆されたり、恫喝されたため止む無く運送せざるを得なかった等。上にあげた行為類型はかなり極端に感じるかもしれません。ただ、ちょっとくらいの過積載なら・・・とか少しくらいはスピードだしても・・・といった意識がないとは言えない荷主もいます。そういった意識が少しずつ過剰になり、上記のようなことが起こっているのが実際のところです。過労運転と荷主勧告、2024年問題上記のように運送会社の違反行為に荷主の関与があった場合、荷主勧告制度の対象となることがあります。なかでも運転手の過剰労働が昨今の大きな問題となっています。過労運転から起こる事故が社会問題となっており、世間の注目も集めやすくなっている状況です。だからと言うわけではありませんが、運転手の過剰労働を避け、安全な運航を行うためにも、厚生労働大臣の定めた下記の「改善基準告示」を遵守できるような発注が重要になってきます。拘束時間(始業から終業までの時間)・1日 原則13時間以内 最大16時間以内(15時間超えは1週間に2回以内)・1ヶ月 293時間以内休息時間(勤務と次の勤務の間の自由な時間)継続8時間以上運転時間・2日平均で、1日あたり9時間以内・2週間平均で、1週あたり44時間以内連続運転時間4時間以内さらに、上記の「改善基準告示」よりも運転手の安全・労働環境に配慮したのが、いわゆる2024年問題と言われている「自動車運転業務における時間外労働時間の上限規制(2024年4月1日から)」です。一か月の労働時間の短縮(293時間から275時間へ)や割増賃金の増額等、杓子定規にとらえれば運転手にとっては大変いい話ではありますが・・・それだけではないので、「2024年問題」と言われているわけです。(運転手さんの給料も減っちゃいますからね。残業手当とか・・・)これは運送会社だけではなく、荷主にとってもリスクがあります。・運転手の人手不足による運賃の値上げ・無理を強いる荷主企業からの運送会社離れこういったことが当たり前に考えられます。そうならないために、今から運送会社を自社の下請けとみるのではなく、パートナーとして運送条件の見直しをしていきましょう。具体的には、運送会社からの要望(荷待ち時間の短縮や積み荷の分散)に一緒に取り組んだり、集荷時間の前倒しや到着時間の延長を検討し、効率的な物流を実現できるよう当事者意識を持つことが重要です。